突然ですが、皆さんは広報(PR)と広告の違いを明確に説明することができますか?
広報(PR)も広告も、コミュニケーション戦略における施策であり、企業や団体の商品・サービスをメディアを通じて世の中に広めるという点では同じですが、そのメディアへのアプローチ方法や情報の発信方法は全く違います。
今回はこのPRと広告についてご紹介していきたいと思います。
広報(PR)とは
広報、PRという言葉自体は、昔から「自己PR」や「商品やサービスをPRする」というような形で浸透しているかと思いますが、それは自己主張や宣伝といった意味合いで使われていることが多く、本来の意味とは少し違います。
PRとは「Public Relations(パブリック・リレーションズ / 公衆との関係構築)」の略で、本来の意味は「組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団・社会)との望ましい関係を作り出すための考え方および行動のあり方」です。
日本パブリック・リレーションズ協会によると、PRの機能は下記のように定義されています。
① 社会との共生を図る
② 企業の社会的認知(コーポレート・レビュテーション)を促進する
③ 社会からの企業への要望を聞く
④ 自社を取り巻く社会・経営環境を把握する
⑤ 企業文化の構築・改革を図る
⑥ 以上の活動によって業績の向上に寄与する
ただ、マーケティング業界では「PR」という言葉を「メディアなどの第三者を通じた情報発信により、企業・ブランド価値や商品の売上向上に貢献する活動」という意味合いで使われることが多く、これを「狭義のPR」と呼ぶこともあります。
またPRは、”メディアが価値のある情報とみなして取り上げる”ことを目的とした活動なので、莫大なコストはかからず、広告に比べて、客観性が出るので信用性や説得力が高まります。しかし、企業が自身で情報を選定することはできません。また、メディアが企業についてどのように載せるのかもわからないため、自社のイメージが崩れる可能性もあります。
広告(AD)とは
広告とは「テレビや新聞、インターネットなどの媒体に料金を支払って使用し、世の中に商品やサービスを広く知らせ、人の関心を惹きつけること」です。伝えたいこと・アピールしたいことは企業で決めることができ、その期間や時期も企業側が決定できます。自社のブランのイメージをつけやすいです。
そのため、広く世の中に伝わりやすい一方で、企業が都合の良い情報しか載せていないということを視聴者も知っているので、PRと比べ浸透力がないと言われています。つまり視聴者にとって魅力的な情報でないということは、情報は一時的なものとなってしまい、持続力がありません。
広報と広告の違いとは
次に広報と広告の違いについて説明していきたいと思います。
広報と広告の違いは大きく以下の2つです。
- メディアに対する料金発生の有無
- 情報が主観的か客観的か
1. メディアに対する料金発生の有無
広報(PR)はメディアに広告料を支払うことなく、商品やサービスの情報をメディアに取り上げてもらいやすい形で発信する活動です。いつ・どこで取り上げられるかわからないので、記者などに目に留まりやすいような、話題性のあるコンテンツの提供が必要です。
一方、広告の場合は、新聞・テレビ・雑誌・Web媒体などのメディアの広告枠を購入し、広告内容を提供します。自らの企業で購入して載せるので、自社が載せたい情報を載せたいときに載せることができます。自分たちでPDCAサイクルをしっかりとまわすことが重要です。
2. 情報が主観的か客観的か
広報(PR)は、記者が目に止まった情報をメディアに載せてくれる分、情報に客観性が増します。記者の視点は、一般のユーザーからの視点のようなものなので、一般ユーザーの興味・関心も惹きやすくなります。例えば、ある人の噂はその本人から言われるよりも第三者から言われた方が信頼性が増しますよね?これと同じイメージを持っていただければわかりやすいと思います。
一方広告は、企業が載せたい情報をそのままメディアに載せることができます。載せる時期や期間まで全て企業が決めることができるので、その企業のブランドイメージなど全て企業の思うようにすることができます。しかし、企業側の目線から情報を載せるので、PRに比べると説得力がなく、主観的な情報ばかりになってしまいます。
PRと広告の違いは、大きく分けるとこの2つになります。また、言葉だけではわかりにくいと思いますので、以下の図を参照してみてください。
広報(PR)と広告の影響力とその事例
コーラ戦争
PRと広告の影響力を説明するのなら、まずはこの有名な「コーラ戦争」ではないでしょうか?
これは、”コカ・コーラ”と”ペプシ・コーラ”の広告戦争でした。
まず、1886年に発売したのがコカ・コーラでした。これは世界初のコーラで1900年代のコーラといえば「コカ・コーラ」を指していたのです。一方、ペプシ・コーラはそれに遅れること8年の1894年に発売されました。それ以降、ペプシはコカコーラを追う形でシェアを伸ばして行きますが、どうしてもトップシェアであるコカ・コーラに追いつくことができませんでした。そこで打ち出したペプシの広告戦略が「ペプシチャレンジ」でした。これは、道を歩いている一般人に対してペプシ・コーラとコカ・コーラを目隠しをしながら試飲してもらい、どちらが美味しいかだけを味覚だけで判断してもらうというCMでした。ペプシチャレンジではペプシに軍配をあげる人が多く、このCMが放送されるようになってからペプシ・コーラのシェアは徐々にコカ・コーラに近づき始めたのです。それ以降、ペプシはコカ・コーラに挑戦的な広告戦略を打ち出していくようになりました。
一方、コカ・コーラは自社ブランドのイメージを崩さないように、ペプシの挑戦的な広告戦略に対して、攻めに行くことができませんでした。そして、20年における広告戦略によって、ペプシはコカ・コーラを追い抜くことに成功します。最初は自社広告から始まって、それが話題になり、PRされるということもあるのです。このように広告・PRの影響力によって、消費者の常識や印象を大きく変えることは可能なのです。
世界一のいいねを獲得した IKEA(イケア)
続いて、サウジアラビアのIKEAが仕掛けたPR企画をご紹介します。
日本でも報道されて話題になった、Instagramで世界一となる”いいね”を獲得した「謎の卵」を自社の広告に起用したのです。
「突然有名になってしまったあなたへ”ひとやすみの場”を」と釘打たれた広告は、全てのターゲットのニーズを満たすIKEAのコーポレートメッセージを発信する役目も果たしています。
こちらが主役となった「謎の卵」です。
@world_record_eggというアカウント名でポストされた一見何の変哲もない卵が、4976万いいねを集めました。
今回、IKEAのInstagramで起用されたのは「TVEKSAM」(スウェーデン語で『不安(解消)』)という名のマグカップ。
「突然訳も分からず”セレブ卵”に祭り上げられてしまった卵に、束の間の休息を与えたい」というメッセージングも果たしています。
このようにタイムリーな話題をいち早く取り入れ、オウンドメディアで発信することで、PRと広告の両方の役割を持たせることができました。
まとめ
PRと広告の違いは掴めましたでしょうか?
最近は、SNSを中心に直接ユーザーと触れ合える機会も増えているので積極的に広報(PR)と広告を組み合わせて活用してみてはいかがでしょうか。