公正取引委員会がCookieを規制しようとしていることをご存じですか?
Cookieが規制されることによって、消費者はプライバシーと引き換えにネット上での利便性を失い、オンライン広告業界は多大なダメージを受けるかもしれません。
そこで今回は、規制される可能性のあるサードパーティCookieとは何なのか、そして巨大IT企業GAFAのプライバシー対策について説明します。
【目次】
そもそもCookie(クッキー)とは?
Cookieとは、ユーザーがホームページを見る際にWebサーバーからWebブラウザに受け渡しされるデータのことです。
Cookieの受け渡しによって、ログイン情報やブラウザの状態を継続的に管理することが可能になります。
流れてくる広告に自分の関心がある内容が多かったり、一度訪問したWEBサイトのデータが2回目以降も残っていたり、「ログイン状態を保持しますか?」と言った文言が出てくるのは、全てCookieとそれに関連付けられたユーザーデータによって起こっています。
サードパーティーCookieとは?
サードパーティCookieとは、自分が訪れたホームページ以外のサーバとやり取りするCookieのことを指します。Cookieの受け渡しは、訪れたWebページのみとだけで行われるのではなく、そのページ上に掲載されている広告のサーバとも行われます。広告の表示方法を変更することで防ぐこともできますが、強制的に画面上に表示される広告の場合は、Cookieも強制的に渡されてしまい、ユーザーの意図しないサーバーに対して情報が渡される危険性があります。
ちなみにサイトサードパーティーの「サード」は、自分の意図していない誰かから渡されるCookie、つまり「第三者」からもらうCookieなのでこのように名付けられました。そして自分が訪問したホームページとやり取りするCookieのことを「ファーストパーティーCookie」と呼びます。
Cookieの規制
公正取引委員会がユーザーの情報を取得するCookie規制の議論を始めたことには、GAFAへの牽制の意が込められています。
ユーザーから見たCookieのメリットは、一度訪問したサイトのログイン状態を保持出来たり、関心のある広告が流れやすくなるなど、情報を渡すことで利便性が向上する点にあります。そして企業は、Cookieのデータをもとにネット上でのユーザーの行動を分析し、リターゲティング広告などに利用しています。
この「企業がCookieを利用する」という点で、GAFAが莫大な数の個人情報とCookieを利用し、あまり個人情報を持たない企業よりも有利な立場でビジネスを行うことを懸念し、規制に向けた議論が行われています。
Cookieの規制によってGAFAが受ける影響
では実際にCookieが規制されて利用できなくなった場合、GAFAはどれほどの影響を受けるのでしょうか?
専門家は、Cookieを規制してもGAFAへの影響は少ないという見解を示しています。その理由は「ユーザーの利便性」にあります。
amazonを例に考えると、仮にCookieの規制がなされたとしてもamazonユーザーがサービスの利用をやめることはなく、商品レコメンドなどのCookieを利用した機能の便利さ故に「個人に関するCookieの利用」に合意してしまう可能性が高いと考えられています。
つまり、公正取引委員会がCookie規制を行ったとしてもユーザーは便利な機能を利用するためにCookieを受容するので、GAFAは大きな影響を受けないと考えられているのです。
GAFAのプライバシー対策
GAFAはCookieが規制されても特に影響を受けないという話をしましたが、ユーザーのプライバシーをないがしろにしているわけではありません。以下ではGAFAのプライバシー対策について、それぞれの取り組みをご紹介します。
Google(グーグル)
Googleは、公正取引委員会による注意勧告や、アメリカ司法当局による調査を受けたことで、「プライバシーサンドボックス」というプロジェクトを立ち上げ、サードパーティーCookieがない状態でのターゲティング広告についてのアイデアを模索していましたが、2020年1月に「2022年までにChromeにおけるサードパーティーCookieの使用を完全廃止する」と発表しました。
Chromeは世界のブラウザ使用率のうち64%を締めているため、これまでCookieに依存してきたオンライン広告業界は打撃を受けるはずです。
Apple(アップル)
Appleは、公正取引委員会による議論以前からプライバシー保護に力を入れています。公式Webサイトではプライバシーのコーナーが全面リニューアルされ、2019年に行われた世界最大規模の家電見本市である「CES 2019」では会場に向けてプライバシー保護を訴える大型広告を掲載しました。さらに「プライバシー」に焦点を絞った内容のテレビCMも放送しています。
Facebook(フェイスブック)
Facebookは、2018年におきた選挙での個人情報流出と汚職事件を受け、「広告表示の設定」「二段階認証」などの機能を充実させることでプライバシー保護を強化しました。また、ユーザーに個人情報がどのように利用されているかを理解してもらうための啓蒙活動も行っています。
一方で、Cookieを利用した広告表示も継続していくことを示しており、広告主とユーザー双方のニーズを満たす取り組みを進めていくそうです。
Amazon(アマゾン)
Amazonは、2019年9月に、音声アシスタント「アレクサ」が収集しているデータの内容をユーザーが把握できるよう、質問可能なコマンドを追加したことを発表しました。
一方でプライバシー保護に力を入れる企業をランク付けしたレポートでは、星2つ(満点は星5つ)という結果でした。第三者によるユーザーデータへのアクセスの禁止を明文化していない点が評価を下げる原因になったようです。またGoogle、Apple、Facebookはこのレポートで星4つを獲得しています。
サードパーティーCookieとGAFAのプライバシー対策のまとめ
いかがだったでしょうか?
Cookieの規制によって、これからの私たちのネット利用方法は少し変わってくるかもしれません。
またGAFAはプライバシー対策に力を入れていますが、最も大切なのは私たちがCookieの仕組みを理解して、自身のプライバシーに注意を払いながらネットを利用することです。
この機会に是非ネットの利便性とプライバシーについて考え直してみてください。