スマートフォンの普及と共にスマホアプリは生活のあらゆるシーンに欠かせない存在となっており、皆さんのスマホにも多くのアプリがインストールされているかと思います。
そんな中で「用途ごとにいちいち違うアプリを立ち上げるのが面倒」と感じたことはありませんか?そんな時に活用できるのが「スーパーアプリ」です。
今回は、1つで様々なアプリを起動することができるスーパーアプリについて解説していきます。
【目次】
スーパーアプリとは?
スーパーアプリとは、様々な機能を持つアプリを統合し、日常生活のあらゆる場面で活用できる機能を兼ね備えたプラットフォームのような役割を持つアプリのことです。
スーパーアプリをインストールしてしまえば、目的ごとにアプリをインストールしたり立ち上げたりする必要なく、1つのアプリで生活に必要な様々な機能を補うことができます。
スーパーアプリが注目されている理由
- 中国での成功例
近年「スーパーアプリ」が注目されている背景には、中国国内でのスーパーアプリの成功事例があります。中国では政府がインターネット規制を施しており、欧米の企業が参入しにくく国内企業が成長しやすい環境が構築されています。そのため国内企業のテクノロジー発展が目覚ましく、AlibabaやBaiduといった中国のIT企業が国内マーケットシェアの大半を占めています。このような環境下でWeChatとAlipayといったアプリが様々な機能を統合したスーパーアプリとして登場し、圧倒的な優位性を築くようになりました。これが「スーパーアプリ」の始まりと言われています。各国企業はそれに続けと言わんばかりにスーパーアプリの開発に力を入れ始めています。現在ではインドネシアのGO-JEKやシンガポールのGrabなど、東南アジアの新興国を中心としてスーパーアプリが誕生しています。
- ユーザーの一貫した体験
マーケティング調査とデータ分析事業を展開するニールセン デジタルの調査によると、人々が毎日使うスマホアプリは平均8個です。また、1か月あたりに新しくインストールするスマホアプリの数は約5割の人が1~3個と回答しました。更にアメリカでは、スマホユーザーの50%以上が1か月の間でスマホアプリを1個も追加していないという結果も出ています。世の中にはこれほどたくさんのアプリがあるのになぜユーザーは積極的にアプリをインストールしないのでしょうか?それは、アプリをインストールするたびにIDとパスワードを作成し、クレジットカードを登録するというプロセスがユーザーにとって障壁となっているからです。
しかし1つのアプリにすべての機能が備わっているスーパーアプリであればそのような障壁はなくなります。
アジアでスーパーアプリが誕生した理由
なぜスーパーアプリが欧米ではなく中国で生まれ、その後も東南アジアで多く見られるのかについて説明していきます。
先進国ではPCからスマホへと徐々に移行してきた背景があります。そして移行する過程で新たなサービスが生まれ、多くの企業がスマホアプリ市場に参入してきました。そのため独立したスマホサービスが数多くあるような状況になっています。
一方で、中国や東南アジアなどの新興国では、PCの普及を飛ばしていきなりスマホ中心社会となりました。そんな突如現れた巨大市場に対して、莫大な資金を調達した企業が先進国のすでに確立されたビジネスモデルを徹底的に模倣しながら統合することで欧米企業に先駆けることができたのです。
また中国の場合は、先ほども述べた通り国外企業の参入障壁が高いことで国内企業が守られ、それによって垂直統合がしやすかったという事情もあると思います。
日本のスーパーアプリの動向
続いて、日本のスーパーアプリの動向について説明していきます。
2019年11月にヤフージャパンを運営するZホールディングスとLINEの経営統合が明らかになったことで、日本では「スーパーアプリの統合」が起きる可能性が示唆されています。
ヤフーは月間ユーザー数6270万人を誇るモバイル化以前から続くポータルサイトで、1つのIDであらゆるサービスを利用することができます。一方のLINEも、メッセージ機能を中心に音楽ストリーミング、ニュース、モバイル決済などのサービスをLINEID1つでで利用可能です。
今回の統合によって、メッセージングアプリとして莫大な利用者数を誇るLINEを起点に、メディアではYahoo!ニュースとLINEニュース、FintechではPayPayとLINE Pay、電子書籍ではebookとLINEマンガ・LINEノベルなど、様々な分野で重複するサービスを統合し、シナジーを発揮していくと見られています。まだまだスーパーアプリの動向には目が離せないですね。
スーパーアプリのメリット
スーパーアプリのメリットは、ユーザーの利便性の高さにあります。
スーパーアプリでは、1つのアプリ内に決済やメッセージ機能を持った「ミニアプリ」が組み込まれており、ユーザーはそのアプリを離れることなく求めているすべてのサービスを利用することができます。
そのため、ユーザー体験の中に一貫性を持たせ、利便性を高めることができます。その最たる例が「認証機能」です。厳密にいえばスーパーアプリではありませんが、LINEを思い浮かべてみてもらえば分かりやすいと思います。1つのIDとパスワードがあればLINEだけでなくLINEマンガやLINE Payなど、LINEが提供するすべてのサービスを利用することができます。
IT技術の発展と共に情報量が圧倒的に増えている中で、求めているサービスをいかに快適に使えるのかをユーザーが重視する傾向は強まるでしょう。サービスや情報の質だけでなく、そこにたどり着くまでのプロセスも評価基準になるということかと思います。様々な局面で利便性と体験の一貫性の重要度は上昇していくことでしょう。
スーパーアプリの課題
- 個人情報の管理
スーパーアプリでは1つのIDやパスワードを設定すれば様々なサービスを利用できるということはうえで述べました。これは大きな利点ですが、一方で大きなリスクにもつながりかねません。そのリスクとは、スーパーアプリにユーザーの情報が集約されてしまうということです。ユーザー情報を入手しようとする人がいた場合、このスーパーアプリのログイン情報だけ手にいれれば、チャットの内容から決済の情報まで全てが手に入ってしまいます。近年ネット上での個人情報流出といった事件が多く取りざたされており、GAFAを含めた多くの企業がプライバシー対策に苦心しています。スーパーアプリの普及はこれまで以上に「プライバシー問題」に世の中が関心を寄せる原因になりそうです。 - 機能性と利便性の両立
多くの機能を1つのアプリに詰め込んだうえでユーザーに簡単に使用してもらうことは容易ではありません。特にスマホという小さな画面で機能性と使いやすさを両立することは大きな課題となるでしょう。これまで以上に UX や UI が重視されていくことでしょう。
スーパーアプリの事例
WeChat(ウィーチャット)
WeChatは、中国のIT企業Tencentが提供する無料通信スマホアプリです。アプリの収益は世界一を誇ります。
Wechatでは「個別メッセージ・音声通話」「モーメンツ(短文投稿機能)」「送金」「ベンダー支払い」などが行えます。ユーザー数は10.4億人を超え、55歳から70歳までのユーザーにおいても月間アクティブユーザーが5000万人ほどおり、まさに世界を代表するスーパーアプリといえます。
Alipay(アリペイ)
Alipayは、中国のECプラットフォームを運営するAlibabaが提供するモバイル決済アプリです。
Alipayでは「送金・受取」「両替トレード」「観光用クーポン」「航空券・鉄道チケット予約」「配送サービス」「保険加入」「募金」などの金融関連の機能を行えます。中国ではモバイル決済金額が4709兆円にも及び、その中でもAlipayは54%のシェアを誇っています。
Grab(グラブ)
Grabはシンガポールに拠点を置く自動車配車アプリです。2018年にはUberが東南アジアの事業をGrabに売却し、東南アジアでは最大の配車サービスとなりました。
Grabでは「ライドシェアサービス」「送金・受取」「自動車保険」「オンデマンド」などが行えます。今後の展望として、配車サービスに加え、Netflixのようなオリジナルのビデオコンテンツなど多角的な事業展開に力を入れていくそうです。
PayPay(ペイペイ)
PayPayは、2018年にソフトバンクグループがサービス開始した電子決済(QR決済)アプリです。そしてソフトバンクが行った2019年3月期 第2四半期の決算発表会でPayPayを決済アプリからスーパーアプリへと発展させていくビジョンが発表されました。
画像の赤文字は現在PayPayで決済可能なものを表しており、今後はスーパーアプリとして公共料金の支払い、チャージ、フードデリバリーなど生活のあらゆるキャッシュポイントに対応していくための施策を進めていくそうです。
ユニクロやコカ・コーラなどパートナーとの共同キャンペーンを強化すると同時に不正利用対策にも力をいれており、ユーザーへの対応が24時間365日可能な問い合わせ窓口、不正利用の全額補償を行っています。
スーパーアプリのまとめ
スマホが普及した現代において、生活のあらゆることはスマホから行えるようになりました。このような環境下でユーザーはただ質の高いコンテンツを求めるだけではなく、いかに簡単で直感的に使えるかも加味してアプリの利用を判断するようになります。
同時に特定の巨大企業がユーザーの個人情報を束ねる強大な力を持ち始めているのも事実です。このような状況にユーザーとしてどう判断し利用していくかも重要になります。こういったサービスに対するリテラシーを高めつつ、透明性を高めて、利便性と安全性を両立してくことが重要になるのではないでしょうか。