DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?海外と国内の事例もご紹介

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?海外と国内の事例もご紹介

みなさんは世界の様々な企業が課題を感じて推進させようとしているDX(デジタルトランスフォーメーション)をご存じですか?

私たちの周りにもDXがもたらすサービスやテクノロジーで溢れています。

そこで今回はDXについてご紹介していきます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DXとは、デジタル革新によって人々の生活をより豊かにすることを指します。

これだけでは分かりにくいと思うので、もう少し具体的にご説明します。産業革命という言葉を一度は聞いたことがあるかと思いますが、現在は第4次産業革命のまっただ中にあるといわれています。スマートフォンの普及を始まりとし、AR / VR、AIスピーカー、キャッシュレスなど、デジタル技術の発展によって暮らしが豊かになってきました。一方で、それは変革というよりも現代のビジネスのカタチを変えてしまうほどの力を持っているのです。そのような意味も含めDXは上記の意味とは別に、既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすものという意味も持ちます。

また、デジタルトランスフォーメーションの英語表記は「Digital Transformation」なのに、なぜ「DT」ではなく「DX」と略されるのか?と疑問に思った方もいらっしゃるかと思います。

デジタルトランスフォーメーションがDXと略される理由は、英語圏では”Trans”を”X”と略すことが多いので、英語圏の表記に準じて、DTではなく「DX」と略されているのです。

DXが注目されている理由

みなさんは「2025年の崖」という言葉をご存じですか?
これは2018年に日本の経済産業省が発表したデータです。
このデータには、

・テクノロジーの進化に伴う先端IT人材の不足
・デジタル市場の拡大に伴うデータの増大と複雑化

に日本の企業の対応が遅れているということが書かれています。

デジタル大国の中国や他の先進国と比べても日本企業の対応は遅く、少なくとも2025年までに対策を立てて適応しないと、既存システムの保守運用だけで莫大なコストがかかるとされています。

年間で最大12兆円もの経済損失が生まれるという計算も出ており、その2025年が刻一刻と迫ってきていることから、DXの推進を課題とする状況が生まれています。

2018年経済産業省レポートhttps://www.g-contents.jp/2018/data/gcw0.pdf

DX導入のメリット

企業がDXに取り組むことで得られるメリットをご紹介します。

  • 利益率の拡大
    CRMやRPAなど業務のデジタル化によって、生産規模の拡大が促されます。生産規模が拡大するとそれ以上の生産効率性を手に入れることができるため、大幅な利益の拡大にも期待できます。
  • 新しいビジネスモデルの開発
    業界を問わずDXを活用することは、今までにはできなかった新たなビジネスモデルや商品の開発を促すこともつながります。例えばBMWは、より安全性の高い自動車の開発・そして自動運転の実現を目指していました。そのために、車にセンサーを取り付け、何億kmもの走行データを収集し、ビックデータを解析することで新たなサービスなどに活用しています。
  • 変化し続ける市場への対応
    様々な企業がDXに取り組んでおり、GoogleやAmazonなど新たなプレイヤーが台頭するケースはこれまでにもありました。そして今後はより多くの市場でビジネスモデルの変化を余儀なくされるでしょう。
    DXを導入しシステム環境を整えることで、変化し続ける環境にも柔軟に対応できます。

DXの基盤となる5つの分野

DX

DXを加速させる基盤となる分野は「Social」「Mobile」「Analytics」「Cloud」「Sensor」だとされており、頭文字をとって「SMACS」と呼ばれています。ここでは、それぞれの分野についてご説明していきます。

  • Social
    Social(ソーシャル)とは、FacebookやTwitter、LINEなどのSNSのことを指します。

    デジタル技術の発展によって、人間の活動の主戦場はオフラインからオンラインへと移行していくでしょう。これは私生活だけではなく、ビジネスにおいても同じです。最近SNSで求人をしている企業や、AIによってSNS上でヘッドハンティングをする企業が増えているのはその最たるものと言えます。今後は物理的な距離を気にせず、ネット上でいつでも会うことができる環境が更に整っていくでしょう。FacebookやTwitterの台頭により、それらのSNSを追い抜かすことは難しいですが、設備投資額が少ないことやユーザーはより便利なサービスを求め続けていることからビジネスでの参入の余地はまだ残されているでしょう。
  • Mobile
    Mobile(モバイル)とは、その名の通りスマートフォンなどのモバイル端末を指します。

    今やスマートフォンのない生活などあり得ないと思えるほど、モバイルデバイスは私たちの暮らしにとって当たり前のものとなっています。スマホ一つで世界の最新情報を手に入れることができますし、スマホアプリも増加し、多くの人が移動中など暇な時間にスマホを使う時代となりました。
    時代が進むにつれてスマホの重要性は今よりも高まっていくように思えます。その上で、現在スマホに依存していないお年寄りや、主要な情報源をテレビで得ている人に対して、どのようにリーチしていくかというのが今後の大きな課題となってくるでしょう。
  • Analytics
    Analytics(アナリティクス)とは、ビッグデータの解析をより精密にできるようになるということです。

    AI技術やクラウドの発展により、消費者に対して適切と思われるアクションを自動的に取れるようになってきました。リコメンデーション機能やリターゲティング広告などのようにデータ解析がビジネスにおいて一般化したのはこのビッグデータの解析ができるようになったことが一番の要因といえます。以前までは、仮説検証型のデータ解析や予測が主流でしたが、今では、まだ構造化されていないデータや複雑な情報に対してAIが立ち向かえるようになりました。
    今後は位置情報と連携して個人の情報を収集し、「Aさんはこの銘柄のビールが好きなようだ。そして仕事帰りにはこの通りを通るので、近辺でおすすめのビアバーを紹介しよう。」といった更に精密なレコメンデーションが行えるようになるでしょう。
  • Cloud
    削除:
    Cloud(クラウド)とはネットワークを通じたサービス利用やデータ保存を通して更に柔軟な対応が可能になるということです。

    SaaSやPaaS、IaaSの登場で社内にリソースを抱え込むことなく、必要に応じてサービスやインフラを利用できるようになりました。外部の専門サービスの活用によりビジネス効果はアップし、更にクラウドという市場が出来たのでそこに参入する企業も出現し、ビジネスの幅も一層広がりました。
    今後はクラウドにおけるビジネスモデルの確立によってコストはさらに安くなり、上でご紹介したAnalyticsと連動してクラウドサービスの提供者側によるビッグデータの解析がますます積極化するでしょう。

  • Sensor
    Sensor(センサー)は行動や状態を高度に「検知」できる装置のことを指します。家電や自動車など日常生活のあらゆるモノと繋がって情報交換、制御している状態のサービス全般がSensorに含まれます。

    自動車の例を挙げて説明していきます。ブレーキやアクセルの踏み方、急ブレーキの頻度、ハンドルの切り方といったデータを取得することが出来ればそれを解析して「運転の上手い人」と「運転の下手な人」を分類できるようになります。自動車メーカーの視点に立てば、「運転の下手な人」向けにオプションとして運転支援サービスを提供することも可能でしょう。更にデータがを収集することで運転が苦手な人でも運転しやすい車の開発もユーザーベースで行うことができるでしょう。
    当面はスマホがSensorの中心になると思いますが、いずれテレビなど各種家電にセンサーが付き、多様な分析とアクションが可能になるはずです。

DXの課題

DXの妨げになる現状の課題、そしてDX自体が抱える懸念点をご紹介します。

  • ITリテラシーの低さ
    日本は世界的に見ても「ITリテラシー」が低いと言われています。ITリテラシーとは、通信・ネットワーク・セキュリティなどITに紐づく要素を理解する力、操作する力のことです。例えばSNSアカウント炎上に関しても「投稿が世界に露出している」という自覚のない人が無意識的に起こすことが多いです。ITリテラシーを高めるために企業では新入社員に基礎的な知識を養わせるための教育を行い、更に新しい知識やシステムを導入するタイミングでは、役職や部署ごとでまとめて研修を行なったりするなど、企業全体で工夫することが必要です。
  • レガシーシステム

    レガシーシステム

    https://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180907010/20180907010-1.pdf

    レガシーシステムとは、最新の技術や製品を用いたシステムとは対照的な時代遅れとなった古いシステムのことを指します。これは日本だけではなく世界的な課題となっています。日本企業のIT関連予算は約8割が現在のレガシーシステムに割かれています。主な原因としては、「新しいシステムにすることへの違和感、現状維持したいという気持ち」と「予算不足」が考えられます。

  • 既存システムの老朽化
    これまでの既存システムが老朽化・複雑化している分野は数多くあります。そのような状況下で新しいデジタル技術を導入したとしてもデータの利用や活用範囲が限定的なので、その効果も限定的になってしまうという課題を抱えています。一方で既存システムを放置・維持したままだと今後コストが高騰するかもしれないというリスクを抱えています。

世界のDX活用事例3選

ITテクノロジーを活用した世界のビジネスの事例をご紹介します。

Netflix(ネットフリックス):サブスク型サービス

netflix ネットフリックス ロゴ

https://tabi-engine.com/smacs

DVDレンタルの会社として創業したNetflixは、デジタル通信技術の発達に伴いサブスク型の映像ストリーミングサービスを開始しました。今日ではNetflixオリジナルの高クオリティな作品も製作しています。Netflixやamazon primeなどのサービスの台頭により、消費者はDVDレンタルをする際にわざわざ店に足を運ばなくてもよくなりました。

Airbnb(エアビーアンドビー):民泊宿泊施設紹介サービス

エアビー Airbnb ロゴ

https://play.google.com/store/apps/details?id=com.airbnb.android

民間宿泊施設を紹介するサービス「Airbnb」も世界のDXの事例として良く取り上げられます。民間宿泊施設に特化し、格安で紹介できる場所として新たな市場を開拓しました。

Uber(ウーバー):タクシー配車アプリ

Uber ウーバー タクシー配車

https://www.independent.co.uk/news/business/news/uber-driver-earned-less-than-minimum-wage-london-tribunal-told-a7147936.html

日本では「Uber Eats」で有名かも知れません。スマホの位置情報システムを活用してタクシーを呼ぶことのできるタクシー配車アプリ「Uber」はDXの事例として取り上げられることが多いです。従来はタクシーを呼ぶのに「電話する」「道で呼び止める」などが一般的でしたが、このアプリの登場によりボタン一つでタクシーを呼ぶことができる上に、海外旅行客がドライバーの情報(外国語が話せるかなど)を事前に知ることも可能になりました。

これらの企業は全く新しいビジネスを創造するというよりも、既存ビジネスに大きな変革をもたらしたという意味でデジタル・ディスラプター(創造的破壊者)とも呼ばれています。

国内のDX活用事例4選

富士通:DXによって社内改革を進める

富士通 ロゴ

富士通は、DX企業への転換を図るために経営体制、企業文化などを見直し、社内改革を進めました。具体的な施策の1つとして、新会社Ridgelinezの設立です。これにより、DXビジネスを顧客に提供する体制を整えました。2020年度の目標として掲げたテクノロジーソリューション全体で売上高3兆5000億円、営業利益りつ10%を目指すべくこれからも色々な改革が行われていくでしょう。

三井住友銀行:AIを活用したお客様の声の見える化

三井住友銀行 ロゴ

https://worpaholic.com/?p=16283

三井住友銀行は、年間35000件寄せられるお客様からの声をAIを活用し瞬時に分析・見える化できるソフトを開発しました。人力で行うと膨大な時間と作業量になるこのような業務は今後益々AIに互換されていくことにより、業務の効率化をすることができるでしょう。

メルカリ:スマホ専用アプリでのCtoCビジネス

メルカリ ロゴ

https://wakajps.com/blog/sell-camera-lens-on-mercari/

これまでのネットオークションは主にPCを用いて行われていましたが、メルカリはスマホ専用アプリとして利用者の操作を簡略化することで新たな市場を開拓しました。2015年まで500万ダウンロードにとどまっていましたが、2018年には世界1億ダウンロードを突破しました。さらに、服や家電などの再利用を促せるという点で社会課題も解決出来るのではないかと注目も集めています。

コマツ:工事現場でのIoT技術の活用

コマツ ロゴ

http://logomarket.jp/labo/logomark_komatsu/

油圧ショベルやブルドーザーなどの総合機械メーカーであるコマツは「無人の工事現場」を目標として、IoT技術を活用したICT建機をより普及させることに力を入れています。建機をネットにつなげて管理するだけではなく、工事現場を丸ごとデジタル化するための取り組みも行っています。

DXに関するおすすめ書籍

最後に、DXについてより詳しく知りたいという方に、DXに関するおすすめの本を紹介します。

デジタルトランスフォーメーションの実際

DX

DXについてよくわからないという方におすすめしたいのが「デジタルトランスフォーメーションの実際」です。
この本は、DXの実現を「デジタルパッチ」「デジタルレインテグレーション」「デジタルトランスフォーメーション」の3ステップで段階的に解説しています。DXについて体系的な理解を得ることができるので、この本で全体像を把握してからそれぞれ細かい分野について調べると知識が身に付きやすいでしょう。

サブスクリプションシフト DX時代の最強のビジネス戦略

DX

次にご紹介するのが「サブスクリプションシフト DX時代の最強ビジネス戦略」です。
この本は、DX時代に台頭した「SaaS」と「サブスクリプションモデル」のビジネスモデルについて深く言及しています。これら二つのビジネスモデルがどのように成長し、なぜDXを実現するのかを詳しく理解することができます。

アフターデジタル オフラインのない時代に生きる

DX

最後にご紹介するのが「アフターデジタル」です。
この本は、海外の企業の成功事例と日本企業が陥りがちな事例を交えながら、「DXとは具体的に何なのか」をわかりやすく解説してくれます。
DXを実践するためにはどうしたら良いのか、そしてオフラインがなくなった時代を生きるにはどうすべきなのかについて詳しく解説してあります。

DXのまとめ

これからのビジネスはデジタル技術、AIを活用したIT技術が必要不可欠になるでしょう。時代の変化、それに伴う人々のニーズの変化にも適応できるような柔軟な考えを持つことを意識してください。

そしてこの記事を参考にしてDXを推進させるための取り組みを行ってみてはいかがですか?