【マーケティング編】使えるフレームワーク5選

マーケティングフレームワーク5選

マーケティングに携わる人であれば、「フレームワーク」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。用語的な意味で言うと、「フレームワーク」とは「枠組み」という意味になります。マーケティング戦略におけるいくつかの分類(枠組み)に当てはめることで戦略を簡易化し、プロジェクトを行う事、これが基本的な「フレームワーク」という考え方になります。

今回は、マーケティングに使用される数あるフレームワークの中から、使える!フレームワークを5つ、ご紹介したいと思います。

※ これまでにも何度かご紹介した4P、4Cについてはここでは割愛します!

4P、4Cについては「マーケティングとは(基本戦略の立て方)」の記事をご覧ください。

マーケティング基本戦略の立て方《マーケティング担当者必見》

2018.10.27

PEST分析の切り口とポイント

PEST分析は「マーケティングの父」と言われるノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のフィリップ・コトラー教授が、世の中の動向を分析する手法として提唱した分析フレームワークとして知られています。

主に経営戦略やマーケティングを行う際に使用し、自社を取り巻く外部環境になる Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの切り口で分析し、事業戦略やマーケティング上の機会と課題を見出だします。それぞれの頭文字をとり「PEST」と言います。

外部環境分析は、そのアウトプットが戦略のインプットとなるため、決して軽視できない業務であり、外部環境分析の中でも一番初めに着手が必要なのがPEST分析となります。

PEST分析の4つの切り口

それでは、4つの切り口について具体的に説明していきます。

・Politics(政治)

政治的な要因としては、法律や条例の他に、税制や助成金、補助金といった行政レベルの変化がどのような影響を与えるのか考える必要があります。

例えば、食品メーカー、飲料メーカーであれば、「特定保健用食品(トクホ)」の許可を得るか得ないかで印象が変わるため、規制の変化には柔軟にそして、素早く対応しなければなりません。こうした市場競争そのもののルールに影響を与えるといった意味で、政治的要因は重要と言えます。

・Economy(経済)

経済的な要因としては、経済成長や景気、物価や為替動向など、経済の動向変化がどのような影響を与えるのか考える必要があります。

例えば、食品メーカーであれば、為替変動が原材料の輸入仕入れコストに影響を与えます。つまり、「売上」や「投資・コスト」に対して大きな影響を与えることになるため、政治的要因もしっかり確認する必要があるのです。

・Society(社会)

比較的身近なものが、社会的な要因で生活者のライフスタイルの変化や生活者意識の変化がこれにあたります。

例えば、女性の社会進出であったり、未婚率の上昇であったり、商品やサービスをアピールする際に、こういった社会的な要因を考慮する必要があります。

・Technology(技術)

技術的な要因としては、商品開発技術や生産技術、あるいはマーケティング技術の変化になります。特に、IT・デジタルテクノロジーの進化はマーケティング担当者にとって非常に影響力が高く、例えば、GoogleやFacebookなどのプラットフォーマーの登場により安価にそして簡単に広告を出すことができるようになりました。

PEST分析のポイント

PEST分析を有効に行うためのポイントは以下の2つです。

①中長期視点での仮説思考

PEST分析でのポイントは、「中長期的な将来、概ね3~5年後の世の中のマクロトレンドついて仮説を立てること」にあります。仮説を立てシミュレーションすることで、業界に及ぼす影響、環境変化を考える視点が得られます。

②マクロ環境トレンド4つの関連性

個々のPEST分析項目に加えて、「政治」「経済」「社会」「技術、のPEST分析の4項目の関連性を見るとでマクロ環境の全体構造が分かりやすくなります。PEST分析をクロスして解釈することで、新たな洞察を得ることができるでしょう。

こうして見てみると、PEST分析は世の中のことを幅広く把握する必要があります。チームメンバーがいる場合は、複数人で考えるとより精度の高い分析ができるのではないでしょうか。

STP分析の3ステップとポイント

STP分析は、マーケティングにおける基礎的な考え方とされているフレームワークの1つです。ターゲットを選定し、顧客の利益を考察していく考え方とされています。

STP分析の3ステップ

STP分析では、下記3つのステップで考えていきます。

・ Segmentation(セグメンテーション):市場を細分化し標的市場を決定する

・ Targeting(ターゲティング):ターゲット層を抽出する

・ Positioning(ポジショニング):自社の立ち位置を明確化し競争優位性を設定する

Segmentation→Targeting→Positioningというステップを踏んで戦略を考えていくことから、その頭文字を取り、STP戦略と呼ばれています。強みを生かしつつ、より効果的に市場へ参入していくために必要なフレームワークと言えます。

「顧客志向のマーケティング」が求められる時代においてSTP分析は欠かせないマーケティングの基本となっています。分析は、自社目線だけでなく、消費者目線で行うことも重要になってきます。

STP分析のポイント

STP分析を有効に行うためのポイントは以下の3つです。

①市場へのアプローチが可能かを考える

STP分析を行って最適な市場を見つけたとしても、市場のユーザーに自社の商品やサービスそのものはもちろん、その魅力などが伝わらなければ、当然売り上げは伸び悩みます。

STP分析は、あくまでターゲットを絞り自社の立ち位置を確認するためのフレームワークです。販売方法などは他のフレームワークを活用するなどして考えなければいけません。STP分析のみで満足せず、多角的な視点から考えるようにしましょう。

②市場の大きさ・成長率を考慮する

STP分析で最適なポジションを見つけたとしても、そのポジションが必ず正しいとは限りません。

マーケットが極端に小さい場合や先細りする可能性が大きい場合などは、ビジネスの展開方法を工夫する必要があるからです。導き出した市場が本当に適切かどうか、別の角度から調査したデータなどで確認することをオススメします。

③順番にこだわらない

セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの3つの項目は連動していますので、どこの項目から分析を始めても結果に大きな違いはありません。

どの項目から行えばよいか分からないという方は、ユーザーの全体像を把握するためにもセグメンテーションから始めるのが良いでしょう。

5F分析の切り口とポイント

5F分析とは、競争戦略論のマイケル・ポーター教授が提唱した業界分析手法で、「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」の5つの要因が業界全体の収益性を決めるというものです。5つの力が強いほど業界の収益は低く、魅力のない業界ということになります。

ちなみに、フォースとは「脅威」という意味です。

5F分析の切り口

STP分析では、下記5つの切り口で考えていきます。

・売り手の交渉力

売り手とは、製品を作る際に必要な原材料などの供給業者のことで『サプライヤー』とも呼びます。
売り手の交渉力が強い場合、高い仕入価格の設定により企業の収益性が低くなる可能性があり、不利な取引条件になってしまうという脅威があります。

・買い手の交渉力

買い手とは、自社の製品やサービスを販売してくれる人、つまり自社の顧客のことです。
買い手の交渉力が強い場合、また、需要が少なかったり、供給が多かったりする場合は希望価格より安く売ることになり、利益が少なくなる脅威があります。

・競争企業間の敵対関係

事業を進める上で、競合他社はほぼ存在します。そういった競争企業間の敵対関係は言うまでもなく脅威の1つとなります。特に、同業他社が多く存在していたり、差別化がしにくい業界では、敵対関係が激しくなります。

・新規参入業者の脅威

自社の業界や市場に新規企業が参入してくると、シェアが奪われる可能性があります。特に参入障壁の低い業界は、新規参入企業の脅威が大きくなります。

・代替品の脅威

自社製品と同じような代替品、また、自社製品より低価格かつ高品質の優れた代替品が現れた場合、脅威が大きくなります。スイッチングコストが低い場合も脅威が大きくなります。

ビジネスをしているとこうした脅威は常にあるものです。脅威を恐れず、分析調査し対策を講じることが大切です。

5F分析のポイント

ポーター教授が5フォース分析を提唱したのは今から30年以上前であり、当時とは業界の構造や流動性などが大きく変わりました。そのために分析を行う際には以下の2つを意識しましょう。

①時間的単位に気をつける

近年は業界の変化が激しく1年後には業界の状況がまったく変わっているということも珍しくありません。分析をする時間軸、どの時点での競争の状況を見るかを留意しながら分析する必要があります。

②事業的単位に気をつける

30年前の業界は固定的でしたが今の業界は異業種が参入するなど非常に設定しづらい状況にあり、どこまでをひとつの業界とするかで分析結果には大きな差が出ます。

SWOT分析の考え方とポイント

SWOT分析とは、Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の4つの切り口によって市場環境を分析する手法です。

自社を取り巻く環境による影響と、それに対する自社の現状を分析しながら、自社のビジネス機会や潜在的なリスクを発見します。

SWOT分析のやり方

SWOT分析のSWOTの各要素は、事業の外部環境と内部環境に分けられます。
外部環境とは、政治動向、規制、経済・景気、社会動向、技術動向、業界環境の変化や顧客ニーズなど、自社の努力で変えられない要因を指します。これら外部環境を分析して、機会(O)と脅威(T)を導き出します。
内部環境は、自社でコントロールできる要素であり、SWOT分析で具体的に言えば、強み(S)と弱み(W)に当たります。

SWOT分析の際には、外部環境である機会(O)と脅威(T)の分析からはじめます。業種業界や分析対象によって多少変わってきますが、

・市場規模
・競合の状況
・景気や経済状況
・法律や規則

といった視点から導きだします。

次に、内部環境である強み(S)と弱み(W)を分析します。

例えば、

・認知度やブランド力
・価格や品質
・サービス
・技術力

といった視点から導きだします。

SWOTの要素が埋まったら、クロスSWOT分析で戦略を立てましょう。

クロスSWOT分析とは、実際に戦略や戦術策定、計画に落とし込むために「強み×機会」「強み×脅威」、「弱み×機会」、「弱み×脅威」のように4項目を掛け合わせて、分析していくことです。

SWOT分析のポイント

・同じ事実情報から複数の解釈を引き出す

同じ事象をとっても、見方を変えれば強みにも弱みにもなりえます。戦略目標を出す場合は、まずは様々な見方で複数の可能性を洗出し、最後に戦略目標を絞り込むとよいでしょう。

・オプション思考

SWOT分析では、一つ一つの事実も組合せにより様々な解釈が可能です。そのため解釈した結果である、戦略目標も複数作成できます。

マーケティング戦略策定プロセスとしては、SWOT分析において、決め打ちにせず、いったん複数の戦略目標を出すように心がけましょう。これを「オプション思考」といいます。戦略目標のあり得るオプションを洗い出した上で、最適な選択肢を選択しましょう。

バリュー・チェーンとは?

アメリカの経営学者であり、ハーバード大学経営大学院のマイケル・E・ポーター教授が提唱したフレームワークです。

バリュー・チェーンとは、自社や競合他社の事業を機能別に分類し、どの工程においてどのくらいの量の付加価値が生まれているのかを分析することによって、早急に解決しなければならない課題の洗い出しや競争優位性を高める差別化戦略の構築を容易にしてくれます。

企業の事業を、自社の製品などが顧客に届くまでの流れに直接関わる「主活動」と、人事や設備維持などの主活動を助ける「支援活動」に分類し、どの工程までが自社の活動であるか、各工程のコストはどれくらいかを把握します。そうして各工程の強みと弱みを理解し、どの工程で自社の付加価値を出せるかを分析していきます。

バリューチェーンには下記のようなメリットがあります。

・自社の強みと弱みを明確化できる
・各活動のコストを把握できる
・競合他社との差別化戦略が立てられる
・価値の高い事業活動にリソース(資源)を集中化で、更に付加価値の向上を見込める

バリューチェーン分析をすることで、自社の強み弱みが明確になります。他社との競争優位性がはっきりするので、差別化戦略などのマーケティング戦略を立案することに、大いに効果を発揮してくれることでしょう。

まとめ

今回は、マーケティング戦略の立案やプランニングの際に、ぜひ使っていただきたいフレームワークを5つご紹介しました。活用してみてくださいね!

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