みなさんこんにちは。広告運用の自動化サービス ROBOMA(ロボマ)の運営チームです。
近年、アプリ市場の拡大により、質の良いアプリが増えてきました。
その際に重要なことは、”作ること”ではなく”売り上げに繋がること”です。
なので、アプリ内でのユーザーの動きを追うことに、アプリ計測の重点が置かれるようになってきています。
ウェブサイトのアクセス解析では Google Analyticsを使うことが多いように、アプリのアクセス解析やイベント計測には専用の計測ツールが使われます。特に広告を配信した場合には、ROI(費用対効果)を正しく評価するために、インストールの流入経路ごとにコストと売上を集計する必要があり、この計測ツール選びは非常に重要と言えます。
そこで今回は、アプリ計測ツールの概要や代表的なサービスをご紹介します。
ROIについてはこちらの記事をご覧ください。
【目次】
アプリ計測ツールがなぜ必要なのか
アプリのプロモーションにおいてはアプリというWebサイトとは異なった環境で計測するため、計測のための技術も異なってきます。
それによってWebサイトだけで完結するプロモーションとは別の理由で計測ツールが必要になってきます。ここではその主な理由の2点をご説明します。
- インストール地点にコンバージョンタグが埋められない
Webサイトプロモーションの場合、「購入完了ページ」や「申し込み完了ページ」などビジネスの成果となるコンバージョン地点は大抵の場合、自社サイト内にあり、各媒体のコンバージョンタグ、あるいは計測ツールのタグを埋めることで成果が何件あったかを計測することができます。
しかし、アプリプロモーションにおいては、アプリをインストールさせるにあたって、ほとんどの場合 AppStore や GooglePlay などの各OSのアプリストア経由でインストールさせることになります。そしてアプリストア上にコンバージョンタグを埋めることはできないため、インストールが何件あったかを、Webサイトだけで完結するプロモーションと同様に計測することができません。そのため後述する異なる技術を使用してインストール件数を計測することになります。
- インストールがマネタイズポイントではないことが多い
最近のアプリの多くはインストール時は無料で、アプリ内の課金や広告枠によってマネタイズしていることがほとんどです。プロモーションを実施する場合、どのチャネル経由で獲得したユーザーがそれらのビジネス上の売上に直結するアクションを起こしているのかを検証する必要があります。
3つのアプリ計測の仕組み
アプリの計測ツールにおける広告媒体の効果測定の仕組みは大きく以下の3つの方法があります。
- Cookieを利用した手法
- フィンガープリントを利用した手法
- 広告IDを利用した手法
それぞれ説明します。
- Cookie(クッキー)を利用した手法
クッキーとはWebサイトアクセス時にブラウザ上に保存される情報のことです。広告クリック時にブラウザにクリック情報を保存し、アプリ起動時にもウェブブラウザを立ち上げることでクリックとインストールの情報を紐付けることができます。
起動時にブラウザを立ち上げる必要があり、クリック時とインストール時のブラウザが異なる場合には計測もれが起きるため、現在ではこの手法単体で計測されることは少ないです。
- フィンガープリントを利用した手法
リダイレクトした際に取得した端末に関する情報と、インストール後起動した際に取得した端末に関する情報を比較して、同一端末であると類推する手法です。参考とする端末情報として、IP情報や端末種別などの情報を利用します。
- 広告IDを利用した手法
広告IDとは端末を匿名かつユニークな広告配信識別用IDのことで、iOSなら「IDFA=Advertising Identifier」、Androidなら「Google Advertising ID」と呼ばれます。
メディア側でこの広告IDが取得可能な場合に、リダイレクトする際に計測サーバーに広告IDを送信し、インストール後起動時にSDKから取得した広告IDと比較して、同一端末であると特定する手法です。
トラッキングツール共通の実装方法
代表的な計測ツール、ツール検討の際の考え方は後述しますが、実際に計測するようになるまで、どのツールにおいても共通して行う手順があります。ここでは使用する計測ツールが決まっている上でどういう手順を踏む必要があるかを説明します。
- 計測するアプリ内イベントを決定する
そもそもですが、アプリをプロモーションすることによってどのように利益につながるのかを整理する必要があります。ECサイトのアプリであれば、商品購入でしょうし、ゲームアプリであればアプリ内のアイテム課金、場合によってはアプリ内の動画広告を表示することでマネタイズしていることもあるかもしれません。いずれにしてもアプリ内の何の行動をトラッキングする必要があるかを整理します。そしてこのときに重要なのが、その行動を起こすまでにユーザーがアプリ内でどういった経路をたどるのかも合わせて考えることです。ゲームアプリをインストールしていきなり課金をするユーザーは多くありません。チュートリアルをクリアする、ステージ3をクリアする、などアプリによって売上に直結するアクションを起こすまでの道のりが様々あるので、それまでのアクションも計測するようにします。こうすることで、その道のりの中でどの部分がネックになっているのかを把握し、改善することができるようになります。
- アプリ内にSDKを実装するアプリのソースコード内に使用する計測ツールのSDKを実装します。詳細な手順は各SDKのヘルプページを見て対応することになりますが、エンジニアによる開発作業が伴うため、この作業にある程度の時間が必要になることを踏まえて全体のスケジュールを見ておく必要があります。
SDKとは何か?についてはこちらをご参照ください。
- SDKの実装テストを実施する
SDKの実装が終わったら、間違いなくイベントが計測できているかを確認する必要があります。その詳細な手順は実装方法と同様に各SDKの手順に従いますが、どのSDKの場合にも以下の点を確認する必要があります。
・インストール(初回起動)が計測できているか・計測したいアプリ内イベントが計測できているか(回数や金額)
- 広告媒体との連携を設定
ここまでの手順でアプリ側で設定することは完了です。このあと実際に計測ツールで広告媒体の成果を見る際に必要になってくる手順を説明します。媒体と計測ツールの連携方法によって手順が異なってきます。・Google、Facebook、Twitterの場合
Google、Facebook、Twitterは広告媒体側のサーバーと計測ツールのサーバーとで直接通信をすることで広告管理画面上に数値を反映するようにしています。各SDKで手順は異なりますが、これらの媒体だけ他とは手順が異なることだけ覚えておいてください。・それ以外の媒体
計測ツールは多くの媒体と連携しています。連携済みの媒体であれば、各SDKで媒体名などで検索することでそれぞれの媒体の連携方法やトラッキングリンクなどが表示されます。媒体側での設定方法は媒体によって異なりますが、大抵の場合は、ここで表示されているクリック用のトラッキングリンクとインプレッション用のトラッキング(ビューアトリビューションを計測する場合)を媒体に入稿するかたちで使用します。トラッキングリンクを使用する媒体の場合はそのリンク経由でCV(コンバージョン)テストができるので、必ずそれらのURL経由でアプリをインストールし、計測ツール上で各広告媒体の数値として計測されているかを確認しましょう。
- 広告配信テスト
各媒体の連携作業が終わったら、各媒体で実際に広告配信をします。 - 実績数値の確認
実績数値が計測ツールのダッシュボード上で見ることができているかを確認します。Google、Facebook、Twitter以外の媒体では広告配信前に計測ができているかを確認することができますが、Google、Facebook、Twitterでそれぞれの数値が反映されるかは、このタイミングでないと確認できません。必ずインストール(初回起動)から計測したいアプリ内イベントが計測できているかを計測ツールのダッシュボード、広告管理画面の両方で確認しましょう。
代表的なアプリ計測ツール
アプリの計測ツールは数多くありますが、最近は以下の3つの中から選択する方が多いようです。
それぞれの大まかな違いをまとめていますが、実際に導入する際には必ず各計測ツールの営業担当者の話を聞いた上で検討したほうが良いです。
adjust(アジャスト)
・概要
ドイツのベルリンに本社を置くアドテク企業の計測ツール
連携できる広告ネットワークのパートナーは1500以上。(2018年11月現在)
日本においてはリクルート、楽天やメルカリなどで導入実績があるようです。
・特徴
広告代理店を使用する際にどこまでの数値を見られるようにするかを決める権限設定が比較的自由なツールです。計測を専門としている企業が提供しているツールなので、各広告媒体とも連携が取りやすいようになっています。月額固定費と従量課金をあわせた課金体系になっているため、規模が大きくないアプリの場合は他の計測ツールと比較して割高になる場合があります。
またインストール済みユーザーのデータ抽出が他のツールよりも容易になる「オーディエンスビルダ」という機能があります。例えば直近3日間離反していたユーザーのデータのみを抽出したい場合、「全インストールユーザー – 直近3日起動ユーザー」というリストを作成する必要がありますが、他のツールの場合この作業はExcelなどでデータの突き合わせをしながら作成することになります。
adjustではこれらの条件指定をadjustのダッシュボード上ですることができるため、容易にユーザーリストが作成できます。
自動広告ダッシュボードのROBOMA(ロボマ)は、adjust と連携させて、広告単位の ROI レポートを見ることができます。
Appsflyer(アップスフライヤー)
・概要
イスラエルに拠点を置くアドテク企業の計測ツール。
連携できる広告ネットワークパートナーは3500以上。(2018年11月現在)
導入実績のある企業として、TinderやSkyscanner、直近TikTokに買収されたmusical.lyなどがあります。
サイトの導入実績では外資系の企業が多いように見えますが、日本企業のゲームアプリなどにも多く導入されています。
・特徴
アドフラウド対策のための独自の機能(Protect360)を持っており、他の計測ツールよりアドフラウド対策を強化しているイメージが強いです。課金体型はインストールやリエンゲージメントなどに基づいた従量課金。
OSごとに見る画面が異なるため、プラットフォームをまたいで実績数値を一覧で見たい場合には別でレポート、ダッシュボードを作成する必要がある。また、もともと広告主側が代理店を使用する場合に代理店が使用するメディアの詳細情報が見れない仕様でしたが、直近では「Agency Transparency(代理店データの開示機能)」というかたちで、代理店が実施している媒体の詳細情報が見れるようになり、フラウドとあわせて広告業界の透明性という観点でも力を入れています。
TUNE(チューン)
・概要
アメリカワシントン州に拠点を置く。米国最大手の計測ツール。
エクスペディア、セフォラ、スターバックス、アマゾンを含む多数のグローバル企業に採用されている。
・特徴
アプリのマーケティングに必要な多くのサービスを1つのSDKで提供できる「TUNE Marketing Console」というプラットフォームとして提供している。「TUNE Marketing Console」は、ROAS計測が可能な広告効果測定はもちろんのこと、アプリ内マーケティング・アプリストア分析・実店舗などでのストア内イベント計測といったアプリユーザーの入り口から深部まで一貫した計測・分析ができるソリューションとなっています。
UI、サイトなどが日本語対応しておらず、参考サイトも他の計測ツールと比較して少ないないため、SDK実装、連携設定の際にハードルが高い可能性があります。
アプリ計測ツールの今後の課題
アプリ計測ツールで基本的な分析はできるようになったものの、課題も残されています。
- 端末を跨いだユーザーのユニーク化
当然なのですが、アプリ計測ツール上では、アクティブユーザー数のカウントなどすべて端末ベースで1ユーザーと認識されています。
最近ではクロスプラットフォームで利用できるアプリなどが増えてきており、1人が複数の端末を使用している場合のユーザー行動をアプリ計測ツールだけで分析することは現時点では非常に難しいです。
- ウェブとアプリ間の効果測定
ウェブとアプリの両方から利用できる楽天などのサービスの場合、ウェブで利用するユーザーとアプリで利用するユーザーでどちらが売上に貢献しているかを分析する必要があると思います。
ただ、ウェブを分析するツールとアプリを分析するツールが統合されてないことが多く、アプリとウェブをどう使い分けているかや、ウェブとアプリを跨いだユーザー行動などが見えづらいのが現状です。ウェブだけ、アプリだけに閉じた分析にならないように、会員情報などをもとに独自に計測できる仕組みを構築する必要があるでしょう。
- アドフラウド問題
アドフラウドに対してはアプリ計測ツール各社が対策していますが、アドフラウドの手法も進化しており、すべてのアドフラウドを検出できるわけではありません。特に獲得チャネルごとの費用対効果を分析する際に、オーガニックのインストールを広告媒体のインストールとするなど、計測ツールだけでは技術的に防ぎづらい不正などがあるため、引き続き計測ツール各社と広告媒体各社が連携して対策していく必要があります。
アプリ計測ツールのまとめ
アプリ計測ツールを実装する際には、まずアプリがどう利益につながるかを整理した上で、その目的をしっかりトラッキングできるかを踏まえて導入するツールを検討することが大事です。
またここであげた計測ツール以外にも計測ツールは多くあり、どれもアップデートが頻繁に行われているため、実際に導入する際には各計測ツールの担当者に実施したいことを伝えて話を聞いた上で検討することをおすすめします。