企業のカスタマーサポートにとどまらず、SNSキャンペーンやタスク管理などの幅広い分野でチャットボットが活用され始めています。
数年前までは、AIを搭載しない定型的な返信のみを行うものがほとんどでしたが、現在ではAIを活用した「チャットボット」が主流になっており、働き方改革や業務効率化が重視される昨今、このようなAIを用いたチャットボットは注目を集めています。
今回は、AIを活用したチャットボットの導入事例をご紹介したいと思います。
【目次】
チャットボットとは
チャットボットとは、コミュニケーションを自動で行ってくれるプログラムのことを指します。
ユーザーがメッセージを入力するか、オプションリストから選択すると、その内容に沿ってボットが応答します。
チャットボットは大きく、「人工知能型チャットボット」と「人工無能型チャットボット」に分かれています。人工無能型チャットボットが定型的な対応しか出来ないのに対して、人工知能型チャットボットはAIを搭載しているので、あらゆる会話から個々のユーザーについて学び、パーソナライズされた体験を生み出せるようになります。
AIチャットボットが注目されるようになった背景
AIチャットボットが注目を集めることになったのには以下のような理由が挙げられます。
- チャットサービスの台頭
今では、LINEやChatWorkなど日常でもビジネスシーンにおいてもチャットサービスが当たり前のように利用されています。チャットでのコミュニケーションが当たり前になり、抵抗がなくなったからこそチャットボットも注目を集めているのです。
- 機械学習・AI技術の発展
人とコンピュータがコミュニケーションするということは、機械側が柔軟に解釈し返事を行うことが求められます。従来はコンピュータの苦手とする領域でした。しかし、自然言語処理がさまざまな手法で発達し、さらにディープラーニングと呼ばれる機械学習の新しいブレイクスルーが生まれ、これが近年のAIブームにつながっています。
機械が人間の発する曖昧な言葉を解釈、意図を読み取り返事をするということができるようになり、その技術を応用したチャットボットが注目されています。
- ユーザー体験の重視
企業がチャットボットに注目するのは、顧客に対して優れたUX(ユーザー・エクスペリエンス)を提供し、競争優位を築こうとしているためでもあります。商品やサービスが成熟し溢れている現代では、人々は高機能なだけでは注目しなくなり、特別な体験にこそお金を出すようになりました。このような理由から企業がUXを重視する傾向が強まっています。チャットボットを利用したメッセンジャーアプリにさまざまなサービスを取り込み、ユーザーにクーポンを配布するなど、企業からユーザーへの新しいコミュニケーションチャネルとしての用途が広がっています。
チャットボット導入のメリット
チャットボットを導入するメリットをご紹介します。
- 人件費の削減
これまでのカスタマーサービスなどの窓口業務は人が行っていたので、そこにも人件費がかかっていました。チャットボットを導入することで、それらに使われていた人件費を削減することができます。さらに就業時間などを気にする必要がなくなるので、24時間対応も可能になります。
- 対応品質の維持
チャットボットには、あらかじめ想定される問い合わせ内容とその回答が登録されています。 過去にユーザーから受けた質問を基に作られたFAQや商品情報から適切な回答をチャットボットが検索し、ユーザーに返信・提案します。オペレーターが対応した場合、カスタマーサポートの品質はオペレーターの経験に左右されることがありますが、チャットボットを導入すると、均一なカスタマーサポートが可能となり、品質向上につながります。
- ユーザーとの接点の増加
ウェブ上での企業とユーザーの接点として、チャットボットを活用している企業は多いのではないでしょうか。チャットボットのボット(Bot)を作成し、LINEやFacebook Messengerなどのプラットフォームに公開すれば、そのプラットフォーム上にもユーザーとの接点を作れます。一度チャットボットを利用してくれたユーザーには、再度企業側からメッセージを送ることもできるため、再訪率もウェブページに比べると断然高いという大きなメリットがあります。
- データ蓄積によるマーケティングへの活用
顧客との会話のログを蓄積させ、さらに自然言語処理技術によって会話履歴を分析し、一人ひとりの顧客のニーズに合わせたマーケティングを実現できれば、大きな収益向上につながります。また今まで顧客のニーズに答えるために割いていたコストも機械化によって削減することもできます。
チャットボットを選ぶ際に注意すべきポイント
AIチャットボットを選ぶ際のポイントは以下の4つです。
- 自社の業務に特化した機能があるか
チャットボットは、主にモバイルで提供されており、コールセンター業務・問い合わせ対応・商品の紹介・スケジューリングなど多く業務に対応しています。
どういった機能が必要なのか洗い出し、導入事例を確認して自社の業務に合ったものを選びましょう。
- チャットボット完結型か有人切換のハイブリッド型か
チャットボットには、自動応答でチャットボットのみで完結できるタイプの「チャットボット完結型」とチャットボットでは対応しきれない難しい質問にはオペレーターが対応するハイブリッドなタイプの有人切換の「ハイブリッド型」の2種類があります。自社で利用する際はどちらが良いかを検討した上で、選びましょう。
- ユーザビリティに優れているか
使いにくい画面だと、ユーザーはチャットボットを利用しづらくなります。チャットボットはサービスによって質問文の形式や回答のロジックが異なります。どの程度のやり取りが必要なのかを考え、回答ロジック・質問文の形式を選びましょう。
AI(人工知能)チャットボットの導入事例5選
以下では、AIを活用したチャットボットを活用した企業の導入事例をご紹介します。
日清製粉グループ「法人向けAIチャットボット hitTO(ヒット)」
日清製粉グループ本社では、社内ITヘルプデスクでの対応の質やスピードに課題を抱えていたため、2つのAIを組み合わせた法人向けチャットボットサービス「hitTO(ヒット)」を導入しました。
既存のFAQ(よくある質問)を活用することで従業員からの問い合わせを自動化し、業務効率化を図っています。
現在は、社内だけでなく社外からの問い合わせもチャットボットで自動化することで、会社全体の業務効率化を図っています。
株式会社アスクル「カスタマーサポート用チャットボット マナミさん」
「マナミさん」は株式会社アスクルが運営するネット通販サービス「LOHACO(ロハコ)」で活用されているカスタマーサポート用チャットボットです。ユーザーからの問い合わせの3分の1をマナミさんが対応することで6.5人分の人件費の削減を実現しました。
カスタマーサポートとチャットボットの相性は非常によく、今後は高度な対話が可能になるよう更なる開発が進められていくでしょう。
ホテルニューオータニ「外国人に特化したチャットボット BEBOT(ビーボット)」
ホテルニューオータニでは2020年の東京オリンピックを控え、外国人宿泊客向けのチャットボットである「BEBOT(ビーボット)」を導入しました。BEBOTでは「飲食店の推薦と予約」「周辺観光スポットやアクティビティの推薦と予約」「道案内」「ガイドブックにはない穴場探し」など、まさに現地ガイドの代わりとなるようなサービスを提供することができます。人件費削減につながるだけでなく、顧客の声をデータとして可視化することができるのでサービス改善にも繋げることができます。
AIを活用することで、ユーザー1人1人に合ったサービスを実現出来ることは大きなメリットといえるでしょう。
日亜化学工業株式会社「AI対話エンジン Ladadie(ラダディ)」
日亜化学工業は、給与計算や福利厚生業務などに対応を行う社内申請支援ツールとして「Ladadie(ラダディ)」を導入しました。問い合わせ対応情報の集積や一元化を実現し、従業員の働きやすい環境作りを推進しています。
Ladadieではユーザーの潜在的なニーズを引き出すためにラダリング法という対話技法をAIで導入しています。
従来の一問一答型のシステムとは異なり、複数回の対話を通してユーザーの潜在的ニーズを引き出していきます。
日亜化学工業の例にあるカスタマーサポートのみならず、ユーザーとの密なコミュニケーションを取ることが必要とされるコンサルティングなどの分野でも活用することができます。
ユニクロ「買い物を手助けしてくれるチャットボット ユニクロIQ」
ユニクロのアプリ内に設置されている「ユニクロIQ」は季節ごとのおすすめコーディネートや人気アイテムの検索、店舗ごとの在庫確認までの一連の流れをアプリ一つで簡単に行うことができます。
「旅行」「キャンプ」「デート」などのキーワードを入力することで、そのシーンに合わせた着こなしを紹介してくれます。店舗内では商品のバーコードを読み込むことでその商品を使ったコーディネートの閲覧やその他の色・サイズの在庫検索も行うことができます。
スタッフ・カスタマー相応の負担を軽減できる画期的なチャットボットとなっています。
AIを活用したチャットボットのまとめ
今やチャットボットは業界を超えて様々な分野で活用されています。またAIを活用することで従来のカスタマーサポートだけでなく、幅広い業務に活かすことが可能になりました。
この機会に是非、AIを活用したチャットボットの導入を検討されてはいかがでしょうか。