皆さんは「採用マーケティング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。採用競争が激化している人材採用市場で勝ち残るためのアプローチである採用マーケティングをご説明したいと思います。
【目次】
採用マーケティングとは?
「採用マーケティング」(Recruitment Marketing)とは、人材採用においてマーケティングの考え方や手法を取り入れようとするアプローチで、米国のHRテック企業などを中心に、優秀な人材を効率性を重視して採用するための手法として提唱されています。マーケティングの定義に立ち戻ってみましょう。
<ドラッカーによるマーケティングの定義>
マーケティングの狙いは、顧客というものをよく知って理解し、製品が顧客にぴったりと合って、ひとりでに売れてしまうようにすること。
<コトラーによるマーケティングの定義>
どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げること。
人材採用においてこれらのマーケティングの定義を取り入れると、採用したい人(=ターゲット)のニーズを満たす職場を作り、あらゆる手法を用いて、その価値を採用したい人に伝え、入社したいと思わせること」と言えます。
なぜ採用マーケティングが生まれたのか
- 採用競争の激化
少子高齢化による慢性的な労働人口不足です。企業は自社の成長・発展のため、少ない母数のうちから優秀な人材を見つけ出さなければいけません。このように人材獲得競争が激化している中で理想の人材を獲得するためには、転職潜在層に対してもアプローチすることが必要になってきています。従来、日本企業の採用活動は新卒一括採用が中心であり、未経験の若者を受け入れて長期間かけて育成するのが一般的でした。現在でも新卒採用は盛んに行われていますが、競争環境の変化は目まぐるしく大手企業でも中途採用で即戦力を受け入れようとする動きがあります。従来のような人材紹介会社を利用した母集団形成に頼り切った中途採用活動は限界を迎えていると言えるでしょう。転職潜在層を含め、戦略的にアプローチする必要が出てきたのです。
- 採用手法の多様化
人材採用手法が多様化しているのも採用マーケティングが必要とされる背景といえます。従来は就活サイトや転職サイトを利用した応募が一般的だったのに対し、SNSやイベントを通して求職者に直接アプローチをする「ダイレクトリクルーティング」などの手法も登場しています。その結果、エージェントや求人媒体頼みの採用から中間業者を通さずに、自分たちで0から採用活動を行なう「自社採用」に注力する企業が増加。自社の採用力の強化のために、マーケティング思考が必要とされているのです。
採用マーケティングの流れ
従来の採用活動では、企業の情報発信のターゲットが、求人サイトのユーザーや人材紹介会社の利用者など顕在層に偏っていました。
採用マーケティングでは顕在層だけでなく潜在層にもアプローチをかけていきます。自社の将来の成長にとって、最も必要な人材を獲得するには応募経路・人材会社ごとの採用コストなど、現在の採用活動の問題点を可視化し、リソースの再配分の余地を見つけることはとても重要です。
採用マーケティングは大まかに認知→興味→比較・検討→決定という流れで行います。
- 認知(潜在層)
認知獲得の段階での目標は、「会社のことを知ってもらう」こと。就職・転職ニーズの有無に関係なく、自社に入社してほしいスキルやマインドを持っている人がターゲットとなります。WantedlyやLinkedInなどを活用して、自社の社員や職場の雰囲気、会社のミッション・バリューなどを発信することで、就職・転職をしたいという気持ちがない段階から会社を知ってもらうことができ、実際に就職活動・転職活動を始めるときの候補に入りやすくなります。定期的な情報発信やメディア露出、イベント開催など、就職・転職ニーズが無くても接点を持てる手法が効果的でしょう。
- 興味(顕在層)
認知の次の段階は、「就職先・転職先として興味を持ってもらう」こと。就職・転職意向がすでにある、つまり顕在層へアプローチする施策を打ち出す必要があります。具体的には、Green、BizReach、Indeedなどの採用媒体を活用して、求人情報や採用条件などを提示しつつ、直接候補者にアプローチしていきます。 - 比較・検討
この層にいるのは、すでに自社に応募し選考を受けている人であり、他の入社候補となっている会社との比較・検討で優位に立つことを目指します。中途・新卒採用問わず入社する会社を決める時には複数の会社を並行して受けるものであり、選考過程でターゲットの入社意向を高めることが目標となるのです。そのためには、現場の社員と話す機会を設ける、選考過程を見直すなどの方法が考えられます。特に選考における見極め精度の向上は企業側の採用コスト削減においても重要です。採用コストとは入社した人数ではなく、離職せずに会社に残って、事業に貢献している人材に対するコストで評価されるべきです。これまで採用担当部署と、入社後の育成・評価部署は別で、またデータも別々に管理されている場合がほとんどでした。こうした人材採用のデータ活用を促進するツールとして、engage や talentio などの採用プロセスを一元管理し・分析できる採用管理システムが次々と開発されています。こういった採用管理システムを活用するのも良いでしょう。
- 決定
この段階では入社したいと思ってもらうことを目指します。つまり採用候補者に、内定を承諾してもらい、最終的な転職・就職先として選ばれることです。入社までに社内イベントに呼んだり、配属予定の部署の方とのランチ会を開いたりする企業もあります。また、入社を迷っている人に対しては迷っている理由や不安など聞き出し、クロージングをかけることも必要です。
Indeed、Wantedlyなどの活用
就職・転職顕在層に対し就職先として興味を持ってもらうための方法に、IndeedやWantedlyなどの求人サービスの活用があります。特徴や活用例とともにご紹介したいと思います。
Indeed(インディード)とは?
世界50カ国、28言語でサービスを展開している世界最大の求人検索エンジンです。月間で1億8千万のユニークビジター数を持ち、アメリカでは求職者の7割が使用しているという現在急激に成長中の求人サービスです。
Indeedの特徴
- 求職者側のメリット
・1度に複数サイトの求人を探せる
Indeedはリクナビやマイナビなどの求人サイトに載っている情報をまとめて検索できます。求人情報特化の検索ツールであり、わざわざ各求人サイトへ登録をする必要はありません。
・希望の求人を探しやすい
Indeedは求職者の検索履歴を元に希望している求人を優先的に表示させます。過去に検索している端末の履歴に関連した求人情報を優先的に表示させます。
- 企業側のメリット
・余計な広告費をカットできる
Indeedの広告費はお金を先に振り込むチャージ制のため予算内で利用できます。チャージした金額の中で柔軟に利用することが可能です。 またIndeedの広告費はクリックされた分しか発生しません。
・条件にマッチした人材の確保ができる
求職者と企業のニーズを満たしてくれるためミスマッチが起こりにくい人材の獲得が可能です。
・キーワード検索のデータが取れる
どんなキーワードで求職者が検索をしたのか、インプレッション数など、どんなユーザーがクリックしたか応募してきたかのデータが分かります。
Indeedの活用例
メルカリ
フリマアプリを提供する株式会社メルカリでは理念に共感する人材を主にリファラル採用、Wantedly、LinkedInで採用しつつ、特定のスキルを要する専門職の採用には、Indeedを活用しはじめました。メルカリでは米国でのサービス拡大に伴い、翻訳メンバーの増員が必要になり、Indeedを活用して募集をかけました。1ヶ月で40件以上の応募があり、うち2名を採用、採用コスト削減にも成功しました。
Wantedly(ウォンテッドリー)とは?
IT・Web業界、そしてエンジニア採用に強い急成長中の求人SNSサービスです。2012年2月のリリースから、スタートアップやベンチャー界隈を中心に利用者が増え続けています。Facebookのつながりを活用したサービスであり転職や採用、インターンなどに特化したサービスを提供しています。
Wantedlyの特徴
- 求職者側のメリット
・プロフィールの拡充により、企業側から逆求人を受け取れる
・本格的な応募の前に企業へ訪問することができ、企業の内情を知れる
・採用担当者とつながりを持つことにより、人脈を広げることができる
・企業の担当者と、チャット形式で気軽にやり取りできる
・ビジネスに役立つ、リアルな情報を日々収集できる
- 企業側のメリット
・潜在転職者を見つけ出すことができる
求人広告としての役割だけでなく採用広報としての機能も持っており潜在層に対するアプローチに強いです。
・安価に募集要項を掲載できる
安価に導入出来る上、運用すればするほど応募が集まりやすいという特徴があります。認知度が低いスタートアップを中心とした中小企業に適した求人媒体といえます。
・「応援システム」により、求人情報を広く拡散することができる
新着求人が掲載されたら、社員に応援するというボタンを押してもらいSNSで拡散してもらうことが可能です。拡散することでマーケティングの機能も果たすと同時に、「おすすめ」や「人気」といった枠の中で上位表示がされやすくなります。
Wantedlyの活用例
株式会社Housmart
不動産業界に従来にはないITを導入し、革新的な不動産サービスを提供している、2014年設立の不動産テックベンチャー。中古マンションの購入・売却アプリやマンション市場に関するメディア運営など、ITを交えた不動産ジネスを手がけています。設立した当初は縁故採用のみでメンバーを集めていましたが、採用拡大のタイミングでWantedlyを開始しました。スタンダードプランを利用し、半年間で営業2人、デザイナー2人、戦略コンサルティング1人、インターン3人の計8人の採用に成功しました。
採用マーケティングのまとめ
いかがだったでしょうか。採用マーケティングについて理解を深められたでしょうか?今後ますます採用競争が激化すると予想されますので、いち早くIndeedやWantedlyなどの求人サービスや採用管理システムなどを活用し、採用マーケティングを効果的に行いましょう。