皆さんはマーケティング・ミックスという言葉をご存知でしょうか?
ものが溢れる現代社会において、良い商品を作れば売れるというわけではありません。たくさんの商品の中から選ばれ続けるためには市場理解、ターゲットの選定、価値の提供などマーケティング活動が効果的に行われる必要があります。
今回は、マーケティング活動の一つの考え方である「マーケティング・ミックス」についてご説明したいと思います。
【目次】
マーケティング・ミックスとは?
マーケティング・ミックスとは、マーケティング戦略において、商品やサービスを販売するためにマーケティング施策を組み合わせることです。
商品・サービスの持つ価格や機能など複数の構成要素を、売れるように構成することからマーケティング・ミックスと呼ばれています。
マーケティング戦略は基本的に上記のような流れで進みます。その中でマーケティングミックスは、策定されたセグメントやターゲットに対してどのようにアプローチするのかを具体的に決定するフェーズ、つまり、マーケティングの実行戦略と位置付けることができます。
マーケティング戦略の立て方についてはこちらの記事をご覧ください。
マーケティング・ミックスの4Pとは?
マーケティング・ミックスは、販売する商品や提供するサービスに応じていくつかのフレームワークやツールを組み合わせることができますが、基本的には「4P」と「4C」の二つに集約されます。
以下では、代表的なフレームワークの4Pについてご紹介します。
マーケティング・ミックスの4Pとは
・Product(商品):品質・デザイン・パッケージ・ブランド名・サービス
・Price(価格):価格・支払い方法
・Place(流通):流通経路・販売する場所
・Promotion(プロモーション):製品の販売を促進する広告やCM
のことです。
この4つのPを組み合わせ、競合他社との差別化を図りながら企業に最適なマーケティング手法を考えるのが、マーケティング・ミックスの基本となります。
化粧品の例を参考に考えていきましょう。
- Product(商品)
希少価値の高い成分が入った化粧品
- Price(価格)
高価格
- Place(流通)
百貨店や専売店
- Promotion(プロモーション)
テレビCMなどマス向けの広告
- Product(商品)
手に入れやすい成分で作られた化粧品 - Price(価格)
低価格
- Place(流通)
コンビニやスーパー、ECサイトなど - Promotion(プロモーション)
SNSやECサイトに表示されるデジタル広告
このように、同じ化粧品ジャンルでもターゲットやポジショニングが異なれば、商品や流通方法、プロモーション手法が全く違うものになることがわかります。
単に「価格が安い」や「広告プロモーションをたくさん行っている」だけでは、売れる可能性は低くなってしまいます。それぞれの要素を掛け合わせることで、一貫したマーケティング戦略をとることが、効果を最大化するために重要なポイントです。商品、価格、流通、プロモーションの4Pを意識し、各要素ごとで整合性が取れているかを確認しましょう。
マーケティングミックスの4Cとは?
続いて、4Pと混同されがちな、マーケティングミックスの4Cについてご紹介します。
4Cとは
・Customer Value(顧客にとっての価値):ターゲットにとってのメリット、悩みの解決
・Customer Cost(顧客の負担):ターゲットが支払うお金や時間
・Convenience(入手の利便性):ターゲットが手間をかけずに入手できる方法
・Communication(コミュニケーション):双方向のコミュニケーションを生み出す手段
のことです。4Pをそれぞれ顧客視点で解釈し直したフレームワークになります。
4Cは4Pにとって代わるものではなく、どちらかというと対になるものであり、4P、4C双方の観点(企業側、顧客側の両方の視点)からマーケティングを考える必要があります。
なぜなら、重要なのは顧客にとっての価値だからです。
例えばiPhoneユーザーは、iPhone自体を欲しいのではなく、その商品によって得られる価値(どこでもインターネットを使える、離れた友人と会話できる、様々なアプリを楽しむことができるなど)を得るためにお金を支払っています。
そのため、4Cという顧客視点のフレームワークに当てはめて考えることで、「顧客にとってこの商品がどのような価値をもたらすか」という視点で戦略を立てることが可能になるのです。
マーケティング・ミックスの成功事例
続いて、マーケティング・ミックスの成功事例を3つご紹介します。
ユニクロ
ユニクロは世界中に店舗を展開するファストファッションの最大手です。巧みなブランド戦略で、「低価格、低品質、それなりのデザイン」というファストファッションのイメージを払拭しました。
- Product(商品)
高品質で、シンプルだがサイズ感などのデザイン性が高い衣服
ヒートテックやデニムなど機能性に優れた商品が多数 - Price(価格)
低価格、企画・素材調達・生産・販売を自社が一気通貫で行うことで流通コストを削減し、優れたコストパフォーマンスを実現している - Place(流通)
国内に813店舗、海外に1421店舗(2020年5月時点)を展開、ECサイトでの販売も強化しており、あらかじめ決まったパターンから顧客の注文に合わせた商品をピックアップするセミオーダー商品を展開 - Promotion(プロモーション)
時期ごとで核となる商品を絞り込み、テレビなどの各種メディアを駆使した広告戦略を展開
サントリー DAKARA
サントリーのDAKARAは、スポーツをしている人のためではなくレジャーやアウトドアといった”日常生活の水分補給飲料”として子供から大人まで幅広い層に人気の飲料になりました。
- Product(商品)
スポーツだけでなく日常生活の水分補給のためのスポーツ飲料 - Price(価格)
競合製品と同価格 - Place(流通)
コンビニ、スーパー - Promotion(プロモーション)
競合が少ない冬場にテレビCM
花王 ヘルシア緑茶
花王のヘルシア緑茶は、「特保」の認定を受けた”健康によい”緑茶飲料として特に中高年のビジネスマンに人気の飲料となりました。
- Product(商品)
お茶に含まれるカテキンの体脂肪を燃焼させるという効果を維持しつつ飲みやすくし、「特定保険用食品(特保)」の認定を受けた緑茶飲料 - Price(価格)
緑茶飲料としては高価格だが、高いからこそ有効性を感じられるというメリットあり - Place(流通)
コンビニ - Promotion(プロモーション)
コンビニ専用商品として発売する一方で積極的にテレビCM
上記3つは飲料や衣服など消費財の事例です。商品自体にも特徴がありますが、それぞれにあった価格設定、流通、プロモーション手法で価値が高まっていることがわかります。
デジタル時代のマーケティング・ミックス
それでは、飲料や消費財のような物理的な商品ではない、デジタル商品の場合はどうでしょうか?
スマホで使うゲームやアプリのようなデジタル商材の場合には、「フリーミアム」(無料で利用できるが使い込むには課金が必要)という価格戦略を用いる場合が多いです。
デジタル商品なので、流通も店舗を介す必要はなく、スマホのアプリストア(AppStore や Google Play)がメインになります。
そして、プロモーション施策は、ネット広告だけでなく大量のユーザーにリーチできるTVCMやスマホと親和性の高い電車の車内広告、看板広告などを同時期に大量投下するケースもあります。
さらに最近では、デジタル商品といえどもユーザーと直接コミュニケーションするためにコミュニティ・イベントを開催したり、店舗を出店する事例も増えてきています。
例えば、「モンスターストライク」(通称、モンスト)という大人気スマホゲームを提供するミクシィ社は、ユーザーとのエンゲージメントを高めるために、渋谷と心斎橋に「XFLAG STORE」という店舗を構えています。
マーケティング・ミックスのまとめ
マーケティング・ミックスとはつまり、4Pや4Cといったフレームワークやマーケティング施策を複数組み合わせることで、マーケティング効果を高めるための戦略です。
商材によっても、競合と差別化をはかる意味でも、マーケティング・ミックスは無限の可能性があります。
ぜひ、みなさんのマーケティング活動の参考にしてくださいね!