近頃、アドフラウド問題が話題になることが増えてきたように感じます。広告の不正問題は、昔から繰り返されてきた「いたちごっこ」の世界です。クリック課金型広告が流行っていた約10年前は偽装クリックが横行していました。しかしその度に対策が講じられてきました。
今回は「アドフラウド(Ad Fraud)」とは何なのか、具体的にどういった問題があり、どのように対策すべきなのかをご紹介したいと思います。
アドフラウド(Ad Fraud)とは
アドフラウドとは、インターネット広告において、実際には広告掲載 / 効果がないにも関わらず、広告掲載 / 効果があったかのように見せる行為のことを指します。
例えば、ユーザーに見られるはずの広告が実際には表示されていない、というような場合や、アプリインストール1件に対して費用が発生するような広告の場合に、端末を複数台用意し、インストール件数を水増しする、といったような行為があります。
様々な種類のアドフラウドが存在しますが、これによって不利益を被るのは「広告主側」であり、アドフラウドをする主体は主にサイト運営者、アドネットワーク運営者、いわゆる「媒体側」になることが多いです。(アドフラウドの種類によっては「媒体側」が不利益を被る場合もあります。)
アドフラウドの何が問題なのか
アドフラウドの問題点は以下の3点となります。
① 効果のない広告に予算が使われてしまう可能性がある
アドフラウドによって、広告掲載 / 効果があったかのように見えますが、実際にはありません。後述する対策をしっかり取っていないとそもそもアドフラウドがあったことにも気づかない場合があり、広告効果のない施策に継続的に予算を使ってしまう可能性があります。
② 広告効果を正しく検証できなくなる
アドフラウドの中には他の正当な広告の効果を横取りするような手法もあります。
その場合、アドフラウドが発生している広告を高く評価してしまうだけでなく、本来高い広告効果を発揮している広告を低く評価してしまう可能性があります。
③ 本来収益が入るべきメディアに収益が入らない
①、②は主に広告主側の不利益ですが、広告枠を提供する媒体側にも不利益が生じる場合があります。本来、広告収益は広告が表示された枠を所有するサイトに入るべきですが、他社のサイトに不正に広告を挿入するアドフラウドなどによって、収益が入るべきメディアに収益が還元されないことがあります。
アドフラウドの種類
様々なかたちでアドフラウドがありますが、ここでは代表的なものを紹介します。
① 隠し広告
本来画面上に表示されていないにも関わらず、システムに広告が表示されていると認識させる。
② プログラムによる広告の不正クリック
botなどのプログラムを使用して、ユーザーが広告をクリックしていないにも関わらず、自動的に広告クリックを発生させる。
③ アプリインストールの水増し
CPI固定媒体を実施した際に発生する可能性が高いアドフラウド。端末を複数台用意し、インストール、アンインストールを繰り返すことでインストール件数を水増しさせます。
これら以外にも様々な手法があり、日々新しい手法が生まれており、アドフラウドを検知する広告効果測定ツールとのイタチごっこ状態になっています。
アドフラウド対策
ここまで説明してきたように広告業界におけるまさに「詐欺」であるアドフラウドですが、どのように対策していくべきなのでしょうか。ここでは広告主としてすべき、具体的な対策をお伝えします。
① インプレッション、クリックのみをKPIとしない
インプレッション、クリック(サイトへの流入数)をKPIとして設定した場合、代理店、媒体はCPCをなるべく安価に抑えようとします。そうすると「botによるインプレッション、クリック」などが含まれる可能性が高くなります。
特定のコンバージョンポイント(成果地点)がないプロモーションの場合でも、
1.何かしらのサイト内アクションを起こさせることをKPIとして設定する(ページスクロールなど) 2.それができない場合は、プログラマティック広告は使用せず純広告のみで実施する※
といった対策が必要です。
※ただし、純広告を実施する媒体がプログラマティック広告で集客することによって質の低いインプレッションになる可能性はあるため、信頼できる媒体か、その媒体の流入元はどこが多いかを把握しておくことは重要です。
② 広告配信面レポートのチェックと精査
広告配信面別のレポートを見ることができる媒体であれば、どの配信面にどれだけ広告が出稿されているか確認することができます。
これを一定のサイクルで確認し、コストをたくさん使っているにも関わらずユーザーに求めるアクションを起こすことのできていない配信面を特定し、その配信面への出稿を停止していくことで、アドフラウドの割合を少なくすることができます。
③ アプリ広告の中でもCPI固定媒体は要注意
アプリ広告の中でもインストールあたりで費用が発生するCPI固定媒体はアドフラウドが起きやすく、かつ発見が難しいため注意が必要です。インストールが多く取れていてプロモーションが成功しているように見えても、実際にはまったく利用されない、意味のないインストールがほとんどだった、というようなことが発生する可能性があります。
CPI固定媒体に関しては以下の4点が重要になります。
1.広告配信面別のレポートが出せるか
→ CPI固定媒体は配信面別のレポートが出せないことが多いため確認が必要です。
2.広告配信面別IDをSDK側で見ることができるか
→ 配信面別のレポートが出せない場合に、配信面を特定しない配信面IDといったようなかたちでSDK上で確認することができる場合があります。その場合はそのIDをもとに精査をすることができます。
3.様々な軸でユーザーの利用率をチェック
アドフラウドが発生したときには、何かしらの軸で見た場合に異常値が出る可能性が高いです。特定のOS、バージョン、特定の地域、イベント発生の住所、各イベント間の時差、などで異常値がないかを常に確認することが必要です。
4.アドフラウドの基準に関して事前に代理店、媒体との合意を得る
これは実際にアドフラウドが発生してしまったときのことを考えた対策になります。何の指標でどういった数値が計測された場合にアドフラウドとみなすのか、を事前に代理店、媒体とすり合わせておく必要があります。事前に確認しておけば、実際にアドフラウドが発生した際の返金要求の交渉などをスムーズに進めることができます。
④ 継続率やROIをリアルタイムにチェック
広告主観点で言えば実施した施策のROIが合うかがプロモーションを評価する際に重要になります。つまりこの点を各媒体、その下のキャンペーン・広告単位でしっかり高頻度でチェックしておけば広告効果に影響するようなアドフラウドの発生は最小限に抑えることができます。
大きく予算を投下するプロモーションになればなるほど、実施施策、出稿媒体は増えてくることが多いかと思います。それらすべてにおいて頻度高くチェックするのは大変だと思うので、代理店を使用している場合には予めその旨を伝えておく、インハウスでプロモーションを実施する際には自動レポートツールなどを使ってデイリーで確認することが手間でないような環境構築が重要になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?プログラマティック広告の構造上、完全にアドフラウドを防ぐことは現時点ではできません。またアドフラウドの主体がわかりづらいこともあるため、今後も撲滅することは難しいでしょう。
アドフラウドが存在するという前提のもと、どのように評価・対策していくかが重要になります。上記のように具体的な対策を講じることで未然に防ぐ、もしくは正しく評価していくことができます。なにより、プロモーションを価値あるものにするためにも、目的とする成果をしっかり見極めていく姿勢が大事なのではないでしょうか。