NPO法人のみなさんが無料で広告出稿できるプログラム「Google Ad Grants」をご存じでしょうか?
日本ではまだ成功事例が少なく、あまり聞きなれないかもしれません。しかしGoogle Ad GrantsはNPO団体にとって活動を促進させるための大きな武器となります。
そこで今回は、NPO団体の方であれば知っておくべきGoogle Ad Grantsについてご紹介します。
【目次】
Google Ad Grants(グーグルアドグランツ)とは
Google Ad Grants とは、毎月最大$10,000(約100万円)分の広告を無償で広告出稿できるプログラムです。Google が社会貢献の一貫としてNPO法人向けに提供する「Google For Nonprofits」サービスの一つです。
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Google がこの取り組みを行っている背景
1団体ごとに毎月100万円分の広告費を無償提供するなんて、大きな損失につながるのでは?と思う方もいるかもしれません。ここでは、Googleがこのような取り組みを行っている理由を2つ考察します。
- CSR(社会貢献)
Google Ad grantsを行っている1つ目の理由としてCSRが挙げられます。CSRとはいわゆる「社会貢献活動」のことで、企業が本来の事業活動以外に、社会課題を解決するために行う取り組みのことを指します。
株主や世間からの評価が業績に顕著に現れる大企業では、本来の事業以外にもこのような社会的責任を果たすための取り組みが重視されます。
Google Ad Grantsを通してNPO団体の活動を支援することで、より社会から信頼される企業になろうというGoogleの考えが伝わってきます。
- 市場規模の拡大
2つ目の理由として、NPOの市場規模(法人数)が年々上昇していることが挙げられます。新たな顧客を開拓するために、年々伸びており未開拓のNPO団体向けキャンペーンを行っているのではないかと考えられます。
参考:https://www.jil.go.jp/institute/reports/2016/documents/0183_02.pdf
Google Ad Grants のメリット
NPO団体がGoogle Ad Grantsを利用するメリットは以下の2つです。
- 毎月最大100万円分の広告を出稿可能
Google Ad Grantsを利用する最大のメリットは毎月100万円分の広告を無償で配信することが可能であるという点です。以下でご紹介するいくつかの規定を守る必要がありますが、無償でGoogle検索の広告枠に広告配信することができれば興味のある人にリーチして寄付を募ることも、同志を集めることも可能です。
クオリティの高い広告を配信することができればより効果的に団体の活動を促進することができるでしょう。
- 認知度の向上
NPO団体にとって一般ユーザーに活動を知ってもらうこと、知名度を上げることは大きな課題であるといえます。
Google Ad Grantsを活用することによって自ら検索してくるより関心の高いユーザーにリーチすることができ、趣旨を知らない人に対して団体の名前や活動内容を知ってもらえる機会が増加するでしょう。
Google Ad Grants の参加条件
Google Ad Grants の参加条件は以下の通りです。この4つを満たしていないとGoogle Ad Grantsを利用することはできません。
- Google for Nonprofitsに申し込む事
https://www.google.co.jp/intl/ja/nonprofits/ のサイトから申し込みを行うことができます。ここで注意しなければならないのが、Google for Nonprofits に申し込むためには「TechSoup」というNPO法人を支援する為のプログラムでアカウント作成をしなければならないということです。
- 申し込みに必要となる条件(不当差別や寄付の受領および使用について等)に同意していること
- 十分なコンテンツを含む公開中のWebサイトがあること
十分なコンテンツとは、団体の活動が簡単に分かるようなWebサイトのことです。審査にあたり視覚的に分かりやすく十分な情報量のあるWebサイトかどうか、そして活動の趣旨とWebサイトの趣旨がマッチしているかどうかも基準となります。
- 政府の事業体および機関、病院、健康管理団体、学校、保育所、学術機関、大学ではないこと(ただし教育機関の事前事業本部は除く)
Google Ad Grantsの利用資格維持の条件
Google Ad Grantsの利用資格を維持するための条件は以下の通りです。これら全てを満たしていないとアカウントの一時停止、場合によっては通知なく停止されてしまいます。
- 広告のリンク先のドメインは1種類のみを使用すること
- 月に一度はAdWordsアカウントにログインし、90日ごとに最低1箇所の更新を行うこと
- 広告とキーワードが団体の活動内容に一致すること
- 商業広告ではないこと
- 広告のリンク先が、他のWebサイトへのリンクが大部分を占めるWebサイトではないこと
- 金融商品の広告、または自動車、船舶、財産の寄贈を求める広告ではないこと
- リンク先のWebサイトにGoogle AdSenceの広告やアフィリエイト広告のリンクを表示していないこと
- アカウント全体の平均クリック率を毎月5%以上で維持する必要があり、2か月連続で5%を下回るとアカウントが取り消される
参考:https://support.google.com/grants/answer/117827?hl=ja&ref_topic=3500093
2018年のプログラム改定により追加された「クリック率5%」の項目が広告運用者にとって一番の障壁であるといえます。Google Ads(一般企業向けの広告配信サービス)の検索連動広告での平均CTRはおよそ3.5%なので、月平均5%を維持するためにはそれなりの工夫が必要になります。効果的な運用方法は下記で紹介しているのでそちらを参考にしてください。
Google Ad Grantsの広告配信における制約
ここでは、通常の Google AdsとGoogle Ad Grantsを比較してどの程度違いがあるのかを述べていきます。
- 入札単価
Google Adsと違い、Google Ad Grantsは入札単価の上限が$2と定められています。$2を超えてしまいそうな場合はキーワードの品質や品質スコアを向上させてCPC費用を低下させましょう。
- 上限予算
先ほども述べましたが、1か月の上限予算が$10,000までに制限されており、1日の予算は$329となります。Google Ads とは違って使える予算が限られているため、重要度の高いキャンペーンに多くの予算を振り分けたりしてより効果的な運用を目指しましょう。一方で、一定条件を満たした団体向けに1か月の上限予算を$10,000から$40,000まで引き上げ可能なGrantsProというプログラムも存在します。実際に運用してみて足りないと感じた方はGrantsProも選択肢として考えてみてはいかがでしょう。
- 配信タイプ
Google Ad Grants の広告配信タイプは検索連動型広告となるため、テキスト広告のみの配信となります。
- ネットワーク
Google Ad Grantsで広告出稿できるのはGoogle検索に対してのみとなります。Googleと連携している他のサービスなどにも広告配信することは出来ないので注意しましょう。
- 商用利用
Google Ad Grantsを商用利用することは禁止されています。リンク先ページにアフィリエイトのリンクを含んでいる場合は広告出稿が停止されます。
- 広告文・キーワード
Google Ad Grantsでは以下の広告文・キーワードを広告に用いることは許可されていません。
・自団体に所有権のないブランド名
・単一のキーワード
・一般的過ぎるキーワード
・品質スコアが2以下のキーワード
- リンク先ページ
SNS(Facebook など)やサードパーティーサービス(Wordpress など)を使用して作成されたページをリンク先に指定することは出来ません。
- 入札ツール
Google Ads で利用可能な拡張CPCやコンバージョンオプティマイザー、最適化タブの入札単価候補の戦略はAd Grantsでは使用することができません。
Google Ad Grantsの効果的な運用方法
最後に、Google Ad Grantsの効果な運用方法をご紹介します。
- キーワード設定を工夫する
広告の表示回数を上げるためにはキーワード設定を工夫しましょう。先ほども述べましたが、Google Ad Grantsの上限クリック単価は$2です。これはどういう意味かというと、例えばキーワードを「寄付」と設定するときの平均入札額は$6なので全く表示されないことになります。「寄付 子供」や「ボランティア 募集」など複数の語句を組み合わせて上限単価に見合ったキーワード設定を行いましょう。
- 動的検索広告の活用
動的検索広告とは「Googleがウェブサイトに基づいて、自動で広告を表示してくれる」機能です。Goolge Ad Grantsにおいても動的検索広告機能を使用することが可能です。つまりキーワードの指定を行わなくてもサイトのコンテンツと関連性の高い検索に対してAIが自動的に広告表示をするため、潜在的にニーズのあるワードを組み合わせて配信をしてリーチを拡大することができます。Googleの調査によると過去6か月間に一度も検索されたことのないキーワードで検索される割合は全体のキーワードの20%を占めているそうなので、動的検索広告の活用は運用時の強い味方となってくれるはずです。
- PDCAを回し最適化していく
単価が上限$2ということ以外は基本的に通常の検索連動広告と変わらないので、Google Ads と同じやり方で広告文、広告グループ、広告の作り方を最適化していきましょう。作成する広告グループごとにどのような意味をもたせて配信した結果どれが効果があったのかをきちんとチェックできるようにしておくことが大切です。日本ではまだGoogle Ad Grantsを活用した事例が少ないので海外の事例やAd Grantsに関する文献に目を通してみてもいいかもしれません。
Google Ad Grants のまとめ
Google Ad Grants は、いくつかの規定を守る必要がありますが、仕組みさえ知っていればNPO団体の活動を促進するための協力な原動力となります。
この機会にGoogle Ad Grantsを活用してあなたの取り組みを世界中に発信してみてはいかがでしょうか?